栗田正行著 【働くパパの時間術 仕事も家事も育児もうまくいく!】のレビュー記事です。
全体の感想まとめ
・本当に必要なことは時間の天引きで確保する
・時間の二毛作=マルチタスクの上手な活用法として「単純な行動」と「複雑な行動」を組み合わせる
・仕事を定時帰りするために必要な要素は「初球打ち」。メリットを理解し、ハードルを下げ、とにかく手をつける
・夫婦間のコミュニケーションを確保するために、子どもが起きてくる前、子どもが寝た後の時間を活用する
・読書の習慣、インプット&アウトプットの習慣などの自己投資を行う
このあたりが、この本から学んだことの骨子です。
レビュー詳細
一生を独身で過ごすんではないかということを覚悟していた自分も、実に幸運なことに奥様と出会いまして結婚しまして、さらに2017年からは子供を持つ立場となりました。
子育て本を一番読んでいた時期は子供が生まれる時期の前後なのですが、そこから1年2年はいわゆる自己投資に関係する時間は少なくなってしまっていたなあと思います。
子育て本は、どの本を読んでも大体まあ耳の痛い話がありつつ、自分の未熟さを自覚しながら「奥様いつもごめんね、いつもありがとう、がんばります」みたいなことを思い出させてくれるお話がたくさんあるのですが、この本にもたくさんありました。
タイトルは「時間術」なので、仕事とか家事をどれだけ効率的にやるかということを重点的に書いてある本、という印象を受けますが、後半は時間術・仕事術だけではなくて夫婦間のコミュニケーションをどう取っていくかなど、子育ての総合的な教科書という側面、さらに最後には「仕事・家事・育児に挟まれて時間がない中で、どう自己投資をしていくか」ということにまで言及されています。
時間術的な側面で印象に残ったのは「時間の天引き」と「時間の二毛作」(=いわゆるマルチタスク)です。
時間の天引きとはずばり「あらかじめ作業に必要な時間を設ける」ということです。「時間が余ったら○○する」ではなく、「この時間で○○をする」と決めるのです。言いかえれば、その日の時間割を立てると考えてもいいでしょう。
(Kindle版より引用 位置No.180~)
本文中では、この記述のすぐ後に本田直之さんの「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」での一文が引用されていますが、同じく本田直之さんの著書「レバレッジ時間術」で、時間の天引きという概念について言及されています。
本当にやりたいことは、あらかじめそれをやる時間を確保してしまう。「暇になったら」「いつか」「そのうち」は一生来ません、というのは、全体の生産性を高めて行動を増やすという発想には、必須なのかもしれません。
「時間の二毛作」は、一般的な認識で言えば「マルチタスク」「ながら作業」といったところでしょうか。何かをやりながら、もう一つの事を進めることで、両方シングルタスクでやった場合に比較して倍近い効率を得ましょう、というやつです。
時間を短縮したいと思っても、物事を処理するスピードには限界があります。ですから、猛スピードで処理することを考えるよりも「同時並行して何とかできないか」と考えたほうが時間を2倍、3倍有効に使えるのです。
(Kindle版より引用 位置No.264~)
マルチタスクを意識する時間術的なものは意識することが多い、というか誰もがやってみたことあるんじゃないかと思います。最近では、「人間の脳は同時に一つのことしか処理できない=マルチタスクは、同時並行してやっているように見えて、高速でシングルタスクを切り替えているだけなので効率が下がる」という考えもあるようですが、個人的には、内容によってはその方が効率的になる部分も多いんじゃないかと思います。
例えば、テレビとか動画を見ながら食事をする、とか。(ほぼ一人の時限定ですが)
音楽を聴きながら、食器洗いをするとか洗濯物を干すとか。
トイレ行きながらちょっとKindleで本を読むとか。
通勤で歩きながら音楽聴くとか、オーディオブックを聴くとか。
この本の中では、「単純な行動」と「複雑な行動」を組み合わせることが、相性よくマルチタスクを実行するコツとしています。
二毛作① 子供を背負う【単純な行動】+読書をする【複雑な行動】
二毛作② 通勤する【単純な行動】+オーディオブックで勉強する【複雑な行動】
二毛作③ お風呂に入る【単純な行動】+イメージトレーニングをする【複雑な行動】
二毛作④ 煮物を煮ておく【単純な行動】+洗濯物を干す【複雑な行動】
二毛作⑤ 食器を洗う【単純な行動】+夫婦で会話をする【複雑な行動】
①なんかは、そういえば子供が生まれてすぐの頃、抱っこしていれば寝てくれてるっていう状態でKindleで結構本を読んでいたなあーと思い返しました。
おそらく本当はシングルタスクで集中してがっつり片付けていってしまった方がいいものも数多くあるんでしょうけど、一緒にできて効率が落ちている気にもならなくて、正直どっちもたいして重要でないタスク(ルーチン化しているスマホゲー+音楽聴く、とか)だったら、マルチタスクにしてしまって時間短縮した方が効率的なのではないかな、と思います。
そう考えると、いわゆる「仕事(勤労)」でのマルチタスクって確かにあんまり試みたことないな、と。どうしても効率落ちちゃいますからね。
仕事に関する記述では、仕事を「初球打ち」=とにかくさっさと手をつけて、定時に帰るようにするというための方法が記述されています。
残業については、自分のリアルな感覚として「残業になることを前提で仕事をしていると、その仕事の効率は著しく落ちる」ということがあるので、それをいかにして排除するか、というのは重要だなあと思います。(と言いつつ、仕事の濃度を薄めながら結局残業して帰ったりするのですけど・・・)
①残業にはタイムリミットがない
②ほとんどの場合、疲労困憊のまま仕事することになる
③「残業して終わらせればいい」という思考が定着する
残業によってなぜ仕事の時間が長くなるか、という理由としてこの3つが挙げられていますが、特に③あたりは気をつけないとほんと、さっさとやれば15分で終わる仕事を平気で45分とかかけることになるので、注意したいところです。
第3章以降は、いわゆる家事・育児のための話が続きます。
第3章は「家事・育児に関する時間術」、
第4章は「ママとのコミュニケーション」に関する話です。
自立という言葉を聞くと、「厳しく接する」あるいは、「子ども独りでやらせる」ということをイメージする方が多いかもしれません。ある意味、間違いとは言い切れませんが、自立する前にたくさん与えておくべきものがあります。それが愛情です。驚くべき事実として、甘やかされてたくさんの愛情を受けた子どもは、他人への信頼感を持つことができるため、自立が早いのです。「子どもの自立」という子育ての最終ゴールへの近道は、子どもへ愛情をたっぷりと注ぐこと。
(Kindle版より引用 位置No.1061~)
私が子どもに接するとき、意識することの1つに「子どもが大切にしていることを大切にする」ことがあります。
(Kindle版より引用 位置No.1068~)
このあたりがいわゆる「子育て論」としては共感できた部分でしょうか。「甘やかされて育つとよい」というような印象の記述がありますが、「『甘やかす』と『甘えさせる』は違う」という考えもありますので「社会のルールを伝えたり、親の考えを伝える」ということは大切だろうと思いますが、例えば昔で言うところの「抱き癖がつくので、抱っこをせがまれても抱っこしない方がいい」とかそういうのはもう根拠もなくて、しっかり抱っこして甘えさせてあげればいい、その方が育った後に子供の方から自然に離れていく、ということだと解釈しています。
後は、個人的に意識しているのは子どもにしっかり「大好き」と伝えることでしょうか。
ママとのコミュニケーションについては、耳の痛い話も多くありますが、大体の本に共通して書いてあることと同じような注意点、という印象です。
・ママへの気遣いや思いやりの時間を持つことがとても重要である
・最初の心がけは「違いを認める」ということ
・男女の脳の違いを知り、使う言葉を選ぶ
・同じ事実でも、解釈が異なる
などなど。
夫婦間のコミュニケーションは、円滑な子育てには必須のものであるということはまあ、書くまでもないことですが、本書ではその時間の確保の仕方として「子どもが起きる前(ビフォー・ウェイクアップ・タイム=BWT)」「子どもが寝た後(アフター・スリーピング・タイム=AST)」)の活用が提案されています。
自分の場合はいつだろうなあー。なかなか時間取るのは難しいですけど、どちらかと言えばBWTでしょうか。ASTは、正直パパもママも子どもと一緒に寝ちゃってることが多い。
そして最後に第5章。成長のための「自己投資」についての記載です。
ざっくりまとめると「読書を習慣付けることがお勧め、アウトプットもセットでね」という感じでしょうか。このあたりはアウトプットの重要さを説く他の本と共通する印象があります。
www.romulus-k-anaume.net
最近、それなりに本を読むようになって思いますが、本を読む習慣があるかどうかは確かに大きいなあーと思います。この知識なかったら考えが深くならなかっただろうなとか、まだ200冊も読んでいない状態でも思ったりしますからね。
読書の習慣は、これからも続けていきたいものです。
総じて、仕事・家事・育児を通じて自分が成長し、幸せな生活をするための本、という印象の一冊でした。