中島輝著【何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書】のレビュー記事です。
全体の感想まとめ
・「自己肯定感の木」という表現がとてもわかりやすい
・自己肯定感は上がったり下がったりするので「上がりやすく、下がりにくい」状態を作ることが大事
・自己肯定感を上げるための方法論は「瞬発型」と「持続型」
最近はいろんな本で取り上げられる機会が多くなっているように感じる「自己肯定感」。狭義の定義で言えば「自尊感情」=「自分には価値があると思える感覚」ということになるかと思います。自己肯定感を強くすることが人生を生きやすく、充実したものにするのには有効ですよという話は多くの本に書いてあるのですが、自己肯定感という感情の概念を知るのには今の所、この本が最適であると感じています。
レビュー詳細
全体を通しての印象として、近年取り上げられる機会の多くなった「自己肯定感」について、一番詳しく書いてあるのはこの本なんじゃないかなというものがあります。
自己肯定感とは何か、という話はもちろんですが、その概念を知った後に誰もが気になる「じゃあそれは、どうやったら高まるんだ」という方法についても、多くの方法が記載されています。
自己肯定感という概念は、知識として自己肯定感を知った後、それをどう高めていくか、そしてどう下がらないようにしていくのかというところがポイントになるので、その方法論としてはこの本に書いてあることがその全てというわけではありませんが、どれか一冊、自己肯定感についての本を読みたいと思ったら、本書を選んでおけばいいのではないかと思います。
自己肯定感を高める方法については、脳科学・心理学的な根拠がある程度あったとしても、実際にやっている人を見たら「だいぶあぶねーやつ」という感覚を持つことがほとんどだろうなというものも含まれていますが、実際すごく自己肯定感の高い人とか、ビジネスで大成功しているような人は大体どこかぶっ飛んでいるというか、普通の人がやらないことを習慣として当たり前のように持っていたりとか(しかもそれが、複数の人に共通していたり)するものなので、とりあえず真似てみるくらいの感覚の方が楽になるかなあと思います。
自分としても、本書を読む前から意識してやっていたこともありましたが、習慣にする前後で比べるとやっぱり意識した後の方が楽に生きられるようになったなあという感覚が強くあります。
その概念を知って、使う言葉や習慣を意識するようになってから半年程度なのでまだまだですが、それでも既に効果を実感できているので、続けていったらすげえことになるのではないかという感覚があります。
自己肯定感の概念として、本書ではこれを「木」に例えて「6つの感」として表現されています。
1.自尊感情
「自分には価値がある」と思える感覚のこと。自己肯定感の木では「根」にあたる。
2.自己受容感
「ありのままの自分を受け入れる」という感覚のこと。自己肯定感の木では「幹」にあたる。
3.自己効力感
「自分にはできる」と思う感覚のこと。自己肯定感の木では「枝」にあたる。
4.自己信頼感
「自分を信じられる」感覚のこと。自己肯定感の木では「葉」にあたる。
5.自己決定感
「自分で決めている」と思う感覚のこと。自己肯定感の木では「花」にあたる。
6.自己有用感
「自分は誰かの役に立っている」と思う感覚のこと。自己肯定感の木では「実」にあたる。
そしてこれらの「自己肯定感」が「種」となり、まわりの誰かや子どもなど次世代へつながっていく、ということです。
この6つの感情はそれぞれがつながりあっていて、どれかが影響を受けるとその他のものへも影響していきます。
仮に、信頼していた恋人から強い拒絶や裏切りを受け、「私って一体、この人のなんだったの?」という自責や疑念がでて、あなたの自尊感情に大きなきしみや傷が発生したとしましょう。
すると、自尊感情という根っこの部分が細くなり、自己肯定感の木のほかの5つの感もざわざわと揺れ、恋人との関係以外でも、仕事や人間関係、日常生活のすべてに影響が出てきます。
(Kindle版より引用 位置No.625~)
日本人は特に自己肯定感が低い民族であると言われています。
狭義の自己肯定感は、根っこの部分である「自尊感情」がそれにあたりますが、内閣府の行った意識調査「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、自分自身に満足している、と答えた13歳から29歳の若者はわずか7.5%。
他の国でも同じくらいの割合なら、ああそうなのかーという話で終わりますが、欧米と比較して突出して低い。じゃあアジア人が低い割合なのかと言ったら、韓国中国と比較しても日本がものすごく低い。
日本人は現状、自分で自分のことが好きになれない民族なのです。
それはなぜかという議論にあまり意味があるとは思いませんが、おそらくは「謙遜」「謙虚」が美しいものであるという文化によるものなのだろうと思います。
自分よりも、他人の方が優れていることを「立てる」のが尊い。とか。
本当はできるしやりたいけど「私にはとても務まりません」と一度断るのが礼儀、とか。
自分も他人も周りにそういう人ばっかりなので、それが当たり前のようになっているし、なんなら自己肯定感が低いもんだから相手にもそれを要求したりする。本当は謙遜や謙虚は「フリ」であって、本心からそうなる必要はないのだけれども、何度も何度も繰り返して、なんなら親兄弟友達先生いろんな人から刷り込まれた結果、それが「本心」になってしまったりする、と。
いわゆる「自分で自分のことが好き」は、一般には「自己中心的」とか「利己的」と理解されてしまうことが多くあります。実際には、自己中心的に見える人の自己肯定感は低い(というよりも、自己肯定感が低いから周りを認められずに自分を認めてもらいたがることが多くなり、自己中心的に見えるのですが)。
そのため「自分で自分が好き」以外の概念もあるのだよということを含めて「自己肯定感」を理解するのに、今の所一番自分がわかりやすいなと思っているのが、「自己肯定感の木」という概念です。
「自分で自分のことが好きと思える」という感覚だけでなく、その他の感覚もあるよなあと思っているところに、この「木」という概念はその優先順位も含めてとてもしっくりきます。
木として存在するためには、根っこがしっかり張っていて幹が太くて、という部分が絶対的に必要です。
つまり「自尊感情」(=狭義の自己肯定感)と「自己受容感」がとても大切な2軸になります。
自尊感情と自己受容感がないのに、例えば「実」である「自己有用感」だけがあってもうまくいきません。
そして、誰もが知りたい「自己肯定感を高めるためにはどうすれば良いのか?」というところ。
本書ではこれは「瞬発型」と「持続型」という分け方をしていますが、どちらも習慣付けることが大切なのかなあという印象があります。
瞬発型で好きなのは
1.「ヤッター!」のポーズ
ですかね。ガッツポーズするのも似たようなもんかと思いますが、仕事中どうにもネガティブさが消えない時はこっそりトイレ行ってやったりすればいいんじゃないかと思います。一説には、ガッツポーズするだけでもドーパミンが出るとかいいますね。
ただ、やっぱり自分の実感で言えば「持続型」のものを習慣つけて続けていくのがいいんじゃないかなと思います。
「持続型」の自己肯定感の高め方は3ステップに分かれます。
ステップ1「自己認知」 自分がどんな状態にあるのかを知る。
ステップ2「自己受容」 現状の自分を受け入れる。
ステップ3「自己成長」 モチベーションを高めて維持する。
ステップ1の「自己認知」は「メタ認知」と言われている概念とほぼ同じかと思います。NLPで出てくる「自分を一歩引いた客観的な目で見る『ディソシエイト』」も同じような感じでしょうか(「マンガでやさしくわかるNLP」参照)。
自己肯定感が上がったり下がったりしている自分を客観的に把握し、今自分がその上下の中のどこにいるのか、ということを把握していきます。
そしてステップ2の「自己受容」。自己肯定感というものの概念を知った後でも、どうにもプラスの感情になれないという時が続いている時期があったのですがその時に必要だったんだろうなあと思うのが「自己受容」です。
「今の自分、ありのままの自分を受け入れる」と言われたりしますが、そうは言ってもどうすればいいのかよくわからないんですよね。
アドラー心理学を用いたコーチングを行なっている、株式会社平本式の平本あきおさんがYouTube動画で言っていたのが今の自分には一番しっくりくるので続けていますが、今の自分にどんな感情が起こっていたとしても「わかるわかる!そう思っちゃうよねー仕方ないよ」と声をかけてあげる、というのが一番行動レベルにまで落とせていてわかりやすいと思います。
自己肯定感の概念を知った後は、特にやっぱり「自分を信じられる力」とか「自分で自分を好きだと思える感覚」が大事なのだということはわかってきます。
ただそうは言ったところで、なかなかそれがうまくいかないんですよね。
つい他人のせいにしたり、他人に対してイライラしたり、悪口が頭の中にものすごい勢いで浮かんできたり。それらを「我慢している」という状態は、長く続かないし何よりも自分のためになりません。
そういう時に自分に送ってあげるメッセージが「わかるわかる!そう思っちゃうよねー仕方ないよ」です。これを毎回挟むことで、「マイナスのことを思ってしまう自分」を一旦受け入れることができます。
そしてその後に来るのがステップ3の「自己成長」。
自分が本当はどうしたいと思っているのか、どういう行動をするのか、ということを考えて落とし込んで行けば、結果的にやっている行動は増えていくものなのだと思います。
というよりも、自己肯定感が下がっている状態、自分で自分のことを責めたり、他人のせいにしたりしている時ってエネルギーが下がっているので、なかなか自分の「次の行動」に行きづらいんですよね。一旦自分で自分のことを受け入れてあげると、その後の行動はものすごくやりやすくなるなあというのが、実感としてあります。もし全体の「行動」の量が同じだったとしても、自分の気分が楽になっているのだったらそっちの方が得ですよね。
楽に生きるためには、まず不完全な自分を受け入れることが必要になります。
でもその間に、他人から不完全な自分を認めてもらえなかったりします(うまくできなかったり気がつかなかったり忘れていたり、いろんなミスをした時にそれを責められたりします)。
そういう時に自分を褒めようとしたり受け入れようとしたりすることって、「甘えているんじゃない」と他から責められそうでなかなかできないなと感じていることがほとんどだったのですが、最近はもう「一旦自分を受け入れていることは、自分だけじゃなくて周りのすべての人を幸せにするのだ」という思いでいます。