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ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る レビュー

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NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班著【ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る】のレビュー記事です。

全体の感想まとめ

読んだ感想を一言で言うなら「今の自分が幸せであることを再認識して、自分の子供をこういった環境に置かないために何ができるかを今一度考えよう」ということでした。
他の家庭の子供について手助けをしたいとか、「消える」ことに気が付ける環境を整備するために何か行動しよう、というような視点には至りませんでした。(社会的に必要なことであるとは思いますが)
子どもが「消える」理由の一つである虐待については、本で触れられていない、そこに至る背景もたくさんあると思われるので、一概に「虐待をするなど考えられない」と切り捨てる気にはなりませんでした。思わず殴りたくなるほど自分の子供が憎らしく感じることもあろうと思います。

自分の置かれてきた環境は恵まれていたし、今置かれている環境も恵まれているのだなあということを認識する機会になったので、とにかく自分が親として、この本に書かれているような事情にならないように意識をして生きていこうということを思いました。

レビュー詳細

本書で語られる「消えた子どもたち」の状況には、様々なものがあります。
・18歳になって本人が自分で逃げ出すまで、小学校も中学校も一日も通わせてもらえず、家の一室に閉じ込められていた少女
・行政上の記録は存在していたが、中学校一年まで学校に一日も姿を見せなかった少年。実際には、5歳の時点で父親にアパートに置き去りにされて死亡。9年もの間、気が付かれることがなかった。
・貧困のため、家族7人が車一台で暮らしていたため小学校の途中から学校へ通えなくなった少年。
・母親がうつ病になり、代わりに家事をせざるを得なくなっていった結果、中学校に通えなくなった少女。
などなど。

特に、18歳まで閉じ込められていた少女「ナミさん」の話は、本書の中心的な人物として描かれています。虐待に至った経緯、そこから脱出するまで、社会に出た後の苦悩、など「子どもたち」側の視点の他に、それを発見できなかった社会(学校・児童相談所)側がどう動いていたのかという視点からも語られています。虐待はそこから脱出し、保護された後にも大きな傷を残す、ということは想像に難くありません。

本書で集計され、分析された「子どもが消える時」の傾向は3つ。
①貧困のはてに ホームレス状態で消える
②虐待・ネグレクトによって消える
③精神疾患の保護者と消える

第三章「貧困のせいで子どもがホームレス、犯罪に」で主に①について、第四章「精神疾患の親を世話して」で主に③について記述されています。

③のような、親が精神を病み、子供に精神的に依存してしまって「常にそばにいてほしい」と思った結果、不登校を強要してしまうという事例に感じたのは、親が「自立する」ということが必要なのだろう、ということです。
それはつまり「自分は自分の人生を歩むし、子供は子供の人生を歩む」ということを、はっきりと認識することだろうと思います。
誰かの人生と自分を重ねたところで、思い通りになるわけでもないですし結局苦しい思いをすることになるわけです。自分の人生が楽しいかどうかを決めるのは自分。自分で自分を認められず、自分で自分を好きになれず、他人に依存することは結局他人を不幸にすることになる。(その環境が不幸かどうかを決めるのは相手なのですが、不幸に思わせてしまう可能性が高くなる)

精神疾患の母親に振り回されてきたが、マオさんは母親を恨んではいないという。母親のせいでこんな生活を強いられている、母親がいなかったらよかったのに、と思うのも当然だろうと勝手に想像していたのだが、そうではなかった。
(Kindle版より引用 位置No.1246〜)

結局子供は、母親のことをなんだかんだ信頼するものなんだよなあと思うのです。
そうであれば、子供の人生が幸せであるために、まずは自分が幸せである。こういう発想で生きていきたいものです。
「自分が不幸であっても子供の人生が幸せであればよい」という発想にはなりたくないなと思います。
親が不幸であること(お金がないとかいう普遍的な事実ではなくて、親が自分で自分の人生を「不幸だ」と感じていること)を勝手に背負わされた子供が、果たして自分が幸せだと思ってくれるだろうか?と思うと、多分ならない可能性が高いと思うのですよね。

自分が幸せであることで、子供に向かうエネルギーが多く満たされることになり、それが注がれた結果、子供が自分の人生を「幸せだ」と思いやすくなる、そんな流れの方が素敵だなあと思います。

こういう児童虐待に関係する本を読むと、自分がいかに恵まれて育てられてきたか、いかに運のいいことに今生きているかを考えさせられるなあと思います。とにかく奥様と子供と、育ててくれたそれぞれの両親に感謝していこうということを、思い返させてくれる機会になります。

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