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実行力 結果を出す「仕組み」の作り方 レビュー

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橋下徹著 【実行力 結果を出す「仕組み」の作り方】 のレビュー記事です。

全体の感想まとめ

リーダーとして、最低限必要な知識を蓄えておくこと。学んでおくこと。
反対勢力の意見は真摯に受け止め、議論を深めること。
何かを改革する時には、必ず抵抗勢力が生まれるのだということを知っておくこと。
最終的に、トップが決めたことには従う、というルールを浸透させておくこと。

このあたりが、自分がこの本から学んだ骨子です。

レビュー詳細

言わずと知れた、大阪都構想を掲げていた元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹さんの本です。
知事になって、市長になって、大阪都構想を住民投票するまでの裏側を含め、組織作りをどのように進めていったのかということが言及されています。

一通り読んで、小学生並の感想を申し上げるなら「橋下さんって、すごい人なんだなあー」というもの。
さすがにこれだけの感想だと、社会人のはしくれとしてもう少し学ぶことはないのかと思わざるを得ないのでもう少し掘り下げていくと、この本を読んで自分が一番にシビれたのは「抵抗勢力がある中で、組織を変革していくには何が必要なのか?」という視点。
橋下徹という人は、大阪都構想を掲げた時「競争力のある大阪にするためには、一度大阪府を壊す必要があるし、大阪市も壊す必要がある」と述べています。つまり、今ある姿ではいけない!それをぶっ壊す!っつって乗り込んで行った人なので初めから抵抗されることがわかっていたという背景があります。膨大な審議事項があったことと思いますが、その中ではもう周りのほぼ全員が反対するという状態になることも多かったのではないかと思います。

これに対して橋下さんが徹底して行っていたであろうことは「反対派の意見も徹底的に聞く」ということ。テレビで取り上げられる時にもよく、自分の意見に対して反論してくる人に「それはしっかり議論していきましょう」というようなことを発言されていたような気がします。

そしてそれと同時に「最終的に決まったことには従う」ということを、お互いに意識するような仕組み作りが必要であると書かれています。

現代のビジネスパーソンは、答えが出せないような難しい案件ばかり抱えています。絶対的な正解を見つけることなどできません。(Kindle版より引用 位置No.372~)

しかし「最終的に決まったことには従う」という点を押さえていないと、意見が平行線をたどって、いつまで経っても結論が出なくなります。(Kindle版より引用 位置No.376~)

「決まったことには従う」という原則を組織に守ってもらうことが、反対意見を聞くための大きなポイントだと僕は、思っています。(Kindle版より引用 位置No.382~)

「決まったことには従う、ということをあらかじめ約束しておく」。
確かにここができていなくて、結局まとまりのない組織になっているところって、多いだろうなあと思います。
昨今、上司・部下・子育てなどあらゆるマネジメントにおいて、細かいところは手法が分かれるにしても、根底に「相手を認めて、相手の話を聴くということが重要なのである」という考えがあるということが増えてきています。傾聴やコーチングを学ぶ上でも「相手の意見を否定しない」ということの重要性が説明されることが多いです。
例えば自分が組織のリーダーだったとして、自らの意見に反対してくる人のことを認めて、その話を聴くということももちろん重要なのですけど、組織の中で意見が完全に一致することなどまずありません。その時にこの「決定したことには従う」という前提がないと、確かに組織は進まなくなってしまうなあと思うのです。
その時に、やみくもに「やれ!」とだけ言われてやるのではなく「これだけ議論して出た結果なら」と納得できる形になったのなら、一番いい形ですよね、という話です。もちろん、どれだけ議論をしようが、納得しないまま取り組むことになることも多くあるでしょうけど、どうせやるなら、自分の意見を全く言えないよりは言える場を作ってもらった方がやりやすいのだろうなと思います。

リーダーは絶対的に正しい決定をするというよりも、誰もが決められない問題について「決める」ということが役割なんです。(Kindle版より引用 位置No.694~)

組織、あるいはチームのトップの仕事は「決断すること」。言葉ではわかっていても、実行することはなかなか難しく、決断することには勇気がいります。
そしてその決断は、少なくとも決断する時点では正しいのか間違っているのか、わかりようもないことも多くありますが、後で振り返った時にできるだけ間違った方向にいかないように、とにかく日常から学んでおくことが必要なのだろうと思います。
学んでおかないと、自分が直接携わらない仕事の概要を把握することも、問題点を抽出することもできない。「最終的にどちらが正しいかなどわからない」と判断するにも、最低限の知識が必要になるのではないかと思います。そのあたりを意識していきたいなと思わせる本でした。

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