工藤紀子著 【職場の人間関係は自己肯定感が9割】のレビュー記事です。
全体の感想まとめ
・自己肯定感=ありのままの自分を受け入れること、には2種類ある。「社会的自己肯定感」と「絶対的自己肯定感」があるが、他社から認められるという前者よりも、根拠なく「自分には価値がある」と思える後者を持っている人の方が、人間関係に問題を起こしにくい。
・他者を責めたり、環境のせいにする根本の要因は自己肯定感が低いことである。
・自分の頭の中で自分に投げかけている「セルフトーク」の言葉がどうあるかで、自分に対する価値観が変化する。
・自分の思いや考えを誰かに伝えたり、文字にしてみることですっきりする。
このあたりが、自分がこの本から学んだ骨子です。
レビュー詳細
自分は現在、いわゆる「プレイングマネージャー」という立場で仕事をしています。
一般的な会社組織で言えば「課長クラス」でしょうか。10人強の人数がいる課の中ではトップだけど、会社の中ではさらに上から管理されている、そんな立場です。
チームのトップとして仕事をしている中で、当然さまざまな人間関係に起因する問題が生じてくるわけですが、リーダーシップやマネジメントに関する勉強を重ねていく中で思うことが「結局みんな、自己肯定感というやつが低いんではないか」ということでした。
これは、自分も含めてです。自分が自分を認められていないから、部下が仕事をしない(行動に移せない)とか、思う通りに動いてくれないということをプラスに捉えられずに苛立ってしまったりするんだろうなあと、思うわけです。
部下に対してポジティブでいられる日もあれば、どうしてもできない日もある。「調子がいいな」と思う日はポジティブだし部下を責めたくはならないところ、「いやー今日はちょっともう無理ですわ・・・」という日はネガティブだし部下を責めやすくなる。その日によって乱高下するという自分の調子を実感しながら仕事を進めているというようになりやすい、と。これはもう自分が自分を認められていない証拠なのではないか、と。
そんな中で、この本を見ました。
タイトル「職場の人間関係は自己肯定感が9割」。いや、まさにそれだー!と。
自分が考えていることを射抜かれたみたいなもんで、他の電子積読状態になっているたくさんの未読本をすっ飛ばして、買って読んでみました。182ページと少なめの分量なので、かなり読みやすい本だなと思いました。
著者の工藤紀子さんという方は、一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会代表理事、という肩書です。セルフエスティーム=自己肯定、という概念を広めて、「自己肯定力を高めることの大切さを伝える」ということを念頭にしている組織のようです。
本の中身は以下のような5章構成になっています。
1章・・・自己肯定感を高めることがなぜ職場の人間関係をよくするか?
2章・・・職場の人間関係を悪くする「自己保身」について
3章・・・「絶対的自己肯定感」を高めるための5ステップ
4章、5章・・・具体的な相手のタイプや仕事のシーン別に、どのようなコミュニケーションを取ればよいか
「人生をどう生きるか」という深い問いは、答えのない世界ではあるんですけども、この記事を書いている時点での自分の考えを端的に表すならば「自分の人生の評価は自分にしか決められないのだから、いいこと(ポジティブな言葉)を思うようにした方が幸せになれるんじゃね?」ということです。どんなに周りに「こんな環境で、あんなこともこんなこともあって、そんな人生を歩んできて、全然能力も低くて。あの人って本当に不幸よね」とか言われていても、本人が幸せだと感じているのならそれは「幸せ」なのですよね。自分の人生の評価を他人に委ねてしまったり、他人の評価によって自分の価値が下がってしまうように感じることから抜け出すために、いいところもダメなところもひっくるめて「自分には価値がある」と思えて「ありのままの自分を受け止める」という、自己肯定感がしっかりと高まっている状態というのは、幸せに生きるためにとても有用なものであろうと思うのです。
自己肯定感という感覚はそれなりに知っているつもりでしたが、一通り読んで新鮮だったのは「自己肯定感」には2種類がある、という概念。
自己肯定感には、「社会的自己肯定感」と「絶対的自己肯定感」の2種類があります。社会的自己肯定感とは、他者からの評価や相対的評価から生まれる自己肯定感。絶対的自己肯定感とは、「自分で自分の存在価値を認めてあげること」で生まれる自己肯定感です。
(Kindle版より引用 位置No.33~)
この本では、このうち土台となるのは「絶対的自己肯定感」。「社会的自己肯定感」はその上に積み上げるものとしています。
社会的自己肯定感は、他者からの評価や結果などをよりどころとするものなので、自分ではコントロールできない外的な要因(年収、地位、評判、SNSの「いいね!」の数、などなど)に左右されやすく、上がったり下がったりしやすい。対して絶対的自己肯定感は、自分の存在そのものの価値を認めているという感覚なので、他人の評価や行動に影響されず、持っていると非常に土台が崩れにくい、どっしりとした人間になる、ということです。
いかにして絶対的自己肯定感を高めるか、つまり「どれだけ、根拠なく自分には価値がある!と思いこめるか?」ということが、自分で自分を認め、他者を認め、人間関係をよくして生きていくということにつながっていくのだろうと思います。他の人から認められることはもちろん嬉しいし、それで自分の価値が上がったように感じるのだけども、他人からの評価があろうがなかろうが、揺るぎない自らの価値、というものをイメージできているかどうか。それが、人間としての「強さ」につながるというような印象を受けました。
具体的な自己肯定感の高め方の中では、
「ネガティブな自分がいることを認める」=「ネガティブな自分があったとしても、そんなことでは価値が変わらないということを認識する」
「自分の思いを紙に書き出してみる」
「頭の中で自分(や他人)に投げかけている言葉=セルフトークを、意識的にプラスのものにする」
このあたりは効果がありそうだなと思います。特に、言葉が与える影響、言葉から受ける影響は大きいので、「頭の中でのセルフトークをポジティブに」をさらに発展させて、「いろいろな思いが頭の中にあったとしても、その全てを認めた上で外に出す言葉はポジティブなものにする」というのがいいんじゃないかと思います。とりあえず「いいね!」と言ったり「ラッキー」「ツイてる」と言ったり、そのあたりがすぐできることになるんじゃないかと。
自分の思いを紙に書き出してみるというのも、(このブログ記事がまさにそうですが)頭の中をすっきりさせるのにはかなり有効だと思います。自分の思いや感情を、書いたり話したり、とにかく外に吐き出してみるだけですっきりするものだなあというのは実感としてあります。ただそれが、ものすごくネガティブである場合には、周りに撒き散らすことになるとその言葉によって周りに悪影響を与えてしまうので、自分1人でやるか、本当に信頼できる奥様とか家族とかに「いざ」という時だけ、頼ろうかなあと思いました。