黒川伊保子著 【妻のトリセツ】のレビュー記事です。
全体の感想まとめ
・プロの夫業に徹し、妻から放たれる弾を10発から5発に減らしましょう。(≒ただし、5発は撃たれましょう)
・男性脳と女性脳の違いによって、夫婦間のトラブルが発生する
・女性脳は「共感」が必要であり、共感によって癒される
・「名もなき家事」に、目の前の観察力の低い夫はほとんど気づいていない
子育て本と同じく、耳の痛い話が大体書いてあるだろうなと思いつつ読んでいましたが、確かにこういうこともありますよねー、と思うところが多く勉強になる本でした。 子育ても全部ひっくるめて奥様には感謝しかありませんが、果たしてそれをしっかり伝えられているだろうか?そして奥様の声に「共感」できているだろうか? このあたりを意識し直そうと思ういい本でした。
レビュー詳細
「はじめに」の部分で、まずひとつ気になるところがありました。
プロの夫業に徹することで、その結果、妻から放たれる弾を10発から5発に減らそうというのが、本書の目的である(なぜ、ゼロを目指さないかは、のちほど)。
(Kindle版より引用 位置No.43~)
いや、5発は撃たれるんかーい!
で、気になる「なぜゼロを目指さないのか?」は、「おわりに」まで言及されません。
まずは理論を知っておくことが重要です、ということなのでしょう。勉強しましょう。
つまり周産期・授乳期の妻は、激しいホルモン量の変化に翻弄され、栄養不足で、寝不足で、自分で自分をコントロールすることもままならない「満身創痍」の状態であることを、まず理解するべきだろう。
(Kindle版 位置No.136~)
いや、わかって・・・いる。わかっては・・・いる。
「いや、あなたは全然わかってないよ。どこがわかってんのさ」という奥様の声が聞こえるような気がしてなりませんが。実際やっぱり新生児の内はずっと気を張ってないといけないし、調子が悪い期間が続いていたし、本当に大変だったと思います。自分も、その大変さの0.1%くらいは、理解していると自負しております。
そして本文は「男性脳」と「女性脳」の違いについて語られていきます。
・男性の会話の主たる目的は「問題解決」である。
・女性脳の大きな特徴は「共感欲求」が非常に高いことである。
・女性の会話とは「日常のささやかな体験」を相手にプレゼントすること。そしてそれを「共感」し「しばしの癒し」としてプレゼントとして返すことである。
意識していないと「共感」を発揮できないのが男性脳。
そしてこれ、妻に限った話ではなく、仕事だろうがプライベートだろうが、男性と女性が関わっていく上で重要なことにあたるだろうと思います。特に仕事では「現状で発生している問題を、どう解決するべきか?」みたいな問いが重なっていくので、そこに全然関係ない感じに聞こえる「私は○○と思います」「△△ということがありました」という女性スタッフの発言に「共感」をしないがゆえ、信頼を失っていくみたいなことは割とあるんではなかろうかと。
「仕事だから、今は共感とかじゃなくて問題解決が重要だから。女性脳じゃなく男性脳でヨロシク」とか言ったところで、簡単に切り離せるもんじゃないですもんね。
まず、知っていてほしいのは、「なじる人は傷ついている」ということだ。1週間前の出来事であろうと、30年前の出来事であろうと、なじっているのは、今この瞬間も心が傷ついているからなのである。
(Kindle版より引用 位置No.237~)
これは、最近よく聞く「自己肯定感」の話で似た話がよく出てくるよなー、と思いました。
「他人を責めている人は、自分を責めている」とかも、これに近いかなと思います。
自己肯定感が高い人は、人をなじることも少なくなるし、人からなじられても応えなくなってくる、という感覚は最近特に強く感じます。
後は、今後我が家に出てくるのかわかりませんが「母と娘のバトル」の話。
父親がやるべきことは、妻と娘がもめていたら、どちらの言い分が正しいかをジャッジすることではない。「どちらが正しいかは関係ない。お母さんを侮辱した時点で、おまえの負けだ」と娘に告げることだ。
娘は、どんなに反発していても母親を大切にする父親を嫌うことはない。むしろ、父親の強さを頼もしさを知ることになる。
(Kindle版より引用 位置No.369~)
娘がママを侮辱するような言葉を使うようになるとは考えたくありませんが、まあ一時の勢いで発してしまったとしても「ママにそんなことを言うなんて寂しいなあ」とか言うかなー、という気がします。
「ママ嫌い!」とか言ったとして「あらそう?パパはママのこと好きだよ」とか返してると思います。
大事なのは「妻が一番であると思うこと」ではなく、さらにそこから「それが周りに伝わっていること」なのではないかと思います。できてるかなあーこれ。
たまに育児関連の話題で挙げられる「名もなき家事」問題についても言及されています。
しかし、料理、選択、掃除、窓拭き、ゴミ捨てといった「名前のある家事」以外に、「名もなき家事」があることに、目の前の観察力の低い夫はほとんど気づいていないのが現実だ。
(Kindle版より引用 位置No.414~)
この後具体的に挙げられているのは「ゴミ捨て」です。たいていの夫は妻がとりまとめてくれたゴミを「ゴミ捨て場に持っていく」が「ゴミ捨て」と思っているが、実際にはその前に分別したり家中にあるゴミ箱のゴミを一ヶ所に集めたりという作業、すなわち「名もなき家事」が発生している、と。
後は「ついで家事」。歯を磨くついでに鏡も磨く、出入りのついでに玄関の靴の埃を落として下駄箱にしまう、とか。そういうのは男性は苦手で、気が付いてほしいところに気が付かないことが多いと。
いやー、気が付けていないところがいっぱいありそうですなあ。
「お米を切らさない」とか「冷蔵庫の製氷機の水を切らさない」とか、いくつかはプロの夫として存在を知覚し、やっていきましょうという「実現可能なタスクの例」として挙げられています。
考えてやっているつもりのところからどれだけ「気がついていない」を見つけられるか。それが勝負ってことですね。
続いては、妻が絶望する夫のセリフ集。
①「だったらやらなくていいよ」
②「つまりこういうことだろ?」
③「おかず、これだけ?」
④「今日何してたの?」
⑤「いいなー君は。一日◯◯(子どもの名前)と一緒で」
(Kindle版より引用)
はい、すみません。①は言ってます。やってストレス感じるくらいならやらなきゃいいじゃん、みたい感じのやつ。
②もやってるかも。話を聞いて、自分なりに内容をまとめた時にそれを確認するため、と言うシチュエーションもありますが。
他はないかなー。③とか都市伝説じゃないかとすら思います。共働き夫婦でこれ言う人いるのかなあー。でも逆に、自分が休日にご飯作ったりする時って、考えられる(作ることができる)レシピがなさすぎて、「主食+主菜+副菜+汁物」をなんとかひねり出して考えたところに「副菜がもう一つほしい」みたいなことを言われてヒエッ・・・ってなることはあります。
1章が「ネガティブトリガーをいかにして発動させないか」について書かれていて、続く2章は「ポジティブトリガーをいかにして作るか」について書かれています。女性脳は、ネガティブなこともポジティブなことも、いつまでたっても何度も何度も思い出すものなのです、と。
・記念日は予告することと、反復(これまでのことを振り返って伝える)が効果的
・「ありがとう」が言いづらいなら「妻がずっとしてきてくれたことをちゃんとわかっている」と伝える
・お土産を買って家に帰る
・男性が欲しい言葉は「あなたが一番」であり女性が欲しい言葉は「あなただけ」(唯一無二)
「ありがとう」は伝えてはいますが、思ってるうちのほんの一部でしかないなあと思いました。思ってるだけじゃ伝わりませんからねえ、意識的に伝えていくようにしたいですね。自分が「ありがとう」って言われたら嬉しいんだから、相手にはもっとありがとうを伝えたいなと思いました。
そして「おわりに」で語られる、「ゼロを目指さない理由」。
実は、脳科学的に「いい夫」とは、時に妻の雷に打たれてくれる夫のことだからだ。
(Kindle版より引用 位置No.1115〜)
いい夫とは、「おおむね優しくて頼りがいがあるが、時に下手をして、妻を逆上させる男」にほかならない。
(Kindle版より引用 位置No.1121〜)
まあ確かに、ストレスの吐き出しどころがない完璧な夫は、気が休まらないかもしれないですなあ。
・・・というのを、自分が力及ばずであることを認める逃げ口上にしつつ、これからも奥様や子どものためにできることをやっていこう、と思わせてくれる本でした。いい本です。