書評・レビュー

異端のすすめ 強みを武器にする生き方 レビュー

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橋下徹著【異端のすすめ 強みを武器にする生き方】のレビュー記事です。

全体の感想まとめ

・本全体に通じる核は「行動」「チャレンジ」である
・情報のインプット、アウトプットには「持論」という視点が有効である
・不確実性の時代を生き抜くには、自分の商品価値を複数持ち、それを高めていくという視点が必要である

橋下徹さんと言えば、抵抗勢力の存在や他者からの批判に負けず、とにかくいろんなことにチャレンジしていった人、という印象が強くあります。残した成果の評価は人それぞれですが、少なくとも自分が得たものを「行動」にどう活かすかという視点、「持論」という言葉を通じて、自分軸を持つことが大切であるということが書かれている本だなと思いました。

レビュー詳細

「はじめに」の一文が、この本はこう始まります。

僕は、常にチャレンジすることで「限界を突破する生き方」を選んできました。
(Kindle版より引用 位置No.8~)

著者である橋下徹さんは、弁護士・タレントから政界に転身して、大阪府知事・大阪市長という立場で大阪都構想を掲げていろいろな改革を実行した、言わずと知れた超有名な方ですが、その行動が「チャレンジ」に満ちていたであろうことは、「一部しか切り取られず、しかも恣意的に編集される」とか言われるマスコミの報道だけを見ても容易にわかります。
その行動の結果や思想が「正しいかどうか」という発想は抜きにして、何かの目標に向かって挑戦していくこと、そのために必要なことを徹底的に考えてやり抜くこと、ということを考えた時に、一番それが表に出ている人なのではないかと思います。

この本の中身は、一冊全てに「行動」「チャレンジ」というキーワードが一本、筋が通ったように貫かれています。
少し前に「実行力」という本が出ていますが、こちらは大阪府知事・大阪市長時代に大阪都構想を掲げて取り組みを行っていた時に、内部で何があり、どのようにそれを攻略して事を進めていったのかということが詳細に書かれています。
実行力」と比較すると「異端のすすめ」は一般的なビジネス書や自己啓発本に近い内容にまとめられている印象です。

今の時代は「不確実性」「本質の時代」と言われます。
不確実性、つまり「何が起きるか、どうなるかがわからない」時代。昔は大きい企業に入って仕事して結婚して家を持って子どもを持って、というのが「幸せの具体像」として一致していたが、今は大きい企業だから安心というわけでもないし、「終身雇用?何それおいしいの?」という時代です。

本の中では「複数の強み」を持つことが、これからの時代に必要なものであると書かれています。

僕から一つアドバイスできるのは、それは「複数の強み」を「掛け算」すること。自分が持つカードを増やすということです。
ひとつひとつは、そこまで突き抜けていなくてもかまいません。
「何も努力していない人よりは格段に抜けているけど、誰も到達していないレベルというわけではなく、同じくらい突き抜けている人は結構いる」くらいの強みを「複数」持てばいいのです。
(Kindle版より引用 位置No.193~)

同じようなことを、前奈良市立一条高等学校校長で、東京都初の中学校の民間人校長の藤原和博さんも書いてましたね。
100万人に1人の存在になるためには、ある分野で100人に1人(上位1%)になり、2つめの分野で100人に1人になれば1%×1%で1万人に1人の存在。さらにもう一つの分野で100人に1人になれば100万人に1人の存在になれる、というようなやつです。

現在で言えば、Twitter、Facebook、YouTubeなどのSNS、ブログなどのツールを使って個人が発信することが容易になっているので、このあたりも「強みの一つ」にできるといいのかと思います。
スポーツで言えば、金メダリストになるのは無理だしYouTubeで言えば今からチャンネル登録者数日本一になるのは無理だけど、それなりに突き抜けた存在にはなれる可能性がある。少なくとも、1つの分野でトップを目指すよりは、3つの分野で「そこそこ」を狙う方が、確率は上がります。
自分の視野を広くして、今の自分が何をしたいのか、何ができるのかを考えた上で「行動する」という意識が必要なのだろうと思いました。
そしてさらに、年数を経過するにつれて何が「ウリ」になるのかは変化していく、という現実があります。5GやAIといったようなテクノロジーの発達によって、人間ができることの一部は機械が代わりに行うようになり、今までよりも短く正確にこなせるようになるので生産性は爆伸びして、今まで人が担っていたその作業の「スキル」は、必要なくなるものもあります。だからこそ、自分のウリは複数持つという意識が大事で、さらにそれを時代の変化に合わせて進化させていくという発想が必要になるのだろうと思います。

もう一つ、本書で重要なキーワードは「持論」。
中番から後半にかけては情報の「インプット」「アウトプット」について、「持論を持つことが大切である」という内容が続きます。

これからの情報化時代に求められる能力は、「知識・情報を持っている」ということよりも、その知識や情報を活用して「自分の頭で考え持論を打ち出せる」ことであると自覚すべきです。
(Kindle版より引用 位置No.1049〜)

持論をアウトプットできるようになるには、大量の知識や情報のインプットが必要です。ただ、ここで僕がいいたいのは、知識や情報のインプットは重要だけれども、それはあくまでも持論を固めてアウトプットするための手段であって、インプット自体が目的になってはいけないということです。
(Kindle版より引用 位置No.1059〜)

2019年のホットキーワードの一つは「アウトプット」だったのではないかと思いますが、情報をインプットすることよりもアウトプットが大事である、ということは割とよくビジネス書には書いてあります。きっと本を書いている人の間では、自分の能力を高める上でアウトプットをするという行程がとても大事だったという認識があるということなのだろうと思います。何か物を学ぶ時に「人に教える」というのを挟むと理解度が劇的に向上するという話もありますしね。

影響力の大きい「誰か」の意見を聞いたとして、それが「正しい」と根拠なく同意してしまっていないか。
自分の意見はそこにあるのか?どう感じ、どう考えるのか?
そんな問いを繰り返してみると、自分がそもそもその事実に対して何か持論を持てるほど知識を持っていないということに気がつけたりするし、持論を構築する上で「自分がどう感じているか」ということを振り返る機会になるので、他の問題が起こった時に自分の感情が整理されて「じゃあ、自分はその問題に対してどう行動したいのか」がはっきりしやすくなるということがあると感じます。

「持論」というものを通じて、自分の商品価値を高めていき「何が起きるかわからない」というこの不確実性の時代を生き抜いていく、という視点が感じられました。そもそも人生設計において、明確に目標や計画を立てられる人は多くはない、ということが書かれている部分があります。
ビジネス書や自己啓発本を開けば、そこかしこに「夢や目標を具体化することが、それを実現するための方法である」ということが書かれているにも関わらず。それだけ「読んでおしまい」「インプットしておしまい」は、起こりやすいということなのでしょう。
知識をつけるということはもちろん大事ですが、その本を読み、何を「行動したのか」というのが、その本によって得られた結果であるということが言えます。

・日常生活の中で、自分が「ウリ」にできる部分はなんなのかを意識し、それを高めていく意識を持つ
・読書を続けて、その本の中から得られた知識を「行動」にどう活かすかを考えて実行する
・何か人の意見を見たら、それに対して常に「自分の意見はどうなのか?」を意識し書き出してみる

このあたりを意識しながら生活していきたいなと感じました。

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